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ChatGPT(生成AI)と一緒に発明をしてみる

三谷拓也 | 2025/04/06
「生成AI」という言葉が急速に普及しています。

生成AIとは、文章や画像、音声、プログラムコードなど、人間が作るようなコンテンツをAIが自動的に生成する技術のことです。
こうしたAIは多くの業務に組み込まれはじめており、その応用範囲は日々広がっています。

「ChatGPT」は、自然な対話を通じて情報を提供したり、アイディアを提案したりできるツールとして、多くの人に利用されている代表的な生成AIです。
OpenAIが開発したこのAIは、インターネット上の膨大なテキストデータを学習しており、様々な分野の話題について柔軟に応答できる能力を持っています。

発明のほとんどは「組み合わせ」から生まれる


ChatGPTの特性をふまえると、「発明」というクリエイティブな活動においても、このツールは役に立つはずです。


発明というと、革新的な技術や誰も思いつかなかったアイディアを生み出す行為を想像するかもしれませんが、実際には既存知識の「新しい組み合わせ」から生まれることが非常に多いのです。

ある分野の課題を、別の分野の技術で解決する発想や、既存の部品やシステムを新しい形で組み合わせるような工夫が、発明の源泉になります。

であれば、広範な知識を持ち、組み合わせのアイディアを高速に提示できるChatGPTは、発明創出のパートナーになるかもしれません。

ChatGPTと農業について考えてみる


たとえば、「農業の効率化」という課題について考えてみます。

現在、農業には多くの構造的課題があります。
農業をする人たちは高齢化しており、今後生産人口は減少していきます。
また多くの作業が手作業で行われています。
このため、将来的には、農産物の供給が不安定化するのではないかと懸念されています。

このような課題を解決するため、ChatGPTに以下の質問をしてみました。

Q1.農業を効率的にする発明を3つ考えて下さい。

ChatGPTは以下の3つの提案をしてくれました。

A.スマート雑草検知&除去ドローン
<概要>
AI搭載のドローンが畑を上空から撮影し、雑草だけを画像認識で自動検出。位置を記録して、小型の地上ロボットがピンポイントで除草に向かう。
<利点>
・農薬を使わずに雑草を減らせる
・人手不足の解消につながる
・作物へのダメージを最小限に抑える

B.可視化できる「土壌の健康診断センサー」
<概要>
土の中に差し込むタイプのセンサーで、水分・養分・pH・微生物の活性度などをリアルタイムで可視化できる。スマホやPCと連動。
<利点>
・過剰な肥料や水の使用を防止
・生育不良の原因を早期発見できる
・環境への負荷軽減にも貢献
 
C.自動収穫アーム付き「スマート温室システム」
<概要>
AIが天候や作物の成長状況を判断し、温度・湿度・日照・換気を自動調整。収穫時期になるとロボットアームが自動で収穫を行う。
<利点>
・効率的な育成&省エネ管理
・収穫時期を逃さない
・高齢者や初心者でも扱いやすい

いずれも興味深い視点なのですが少し漠然としています。
そこで、「C.スマート温室システム」に関して、ChatGPTに以下の追加質問をしてみました。

Q2.スマート温室システムについて、作物の品質をよくする発明をしてください。

これに対して、ChatGPTは以下の4つの提案をしてくれました。

C1.光の波長コントロール照明
・色・香り・糖度などに影響する特定の波長のLEDライトを使用
・作物ごとに「甘くする波長」「色を濃くする波長」などをカスタマイズ

C2.成分分析マイクロセンサー
・土壌・水分・葉の状態などをリアルタイム分析
・「糖度」「アミノ酸」「ポリフェノール量」などの内部品質を可視化

C3.AI栽培レシピ生成エンジン
・過去の栽培履歴 × 品質データ × 現在の環境データ → AIが最適な設定を提案
例:夜の温度を少し下げることで糖度アップ、などの知見を自動活用

C4.プレミアム収穫予測
・品質が最大になる「一番おいしい瞬間」を予測し、通知&自動収穫
・高品質市場向けに最適なタイミングで出荷可能

LEDライトを使うことで、作物の品質を良くすることができるという話は知りませんでした。
「C1.光の波長コントロール照明」についてもう少し具体的に知りたいので、ChatGPTに以下の追加質問をしてみました。

Q3.「色・香り・糖度などに影響する特定の波長のLEDライトを使用」についてエビデンスのある具体的な方法について提案してください。

この質問に対するChatGPTの回答は以下の通り。

C1-1.糖度アップ:赤色LED(660nm)+遠赤色(730nm)の組み合わせ
対象作物:トマト、いちご、パプリカなど
研究例:
・トマトの栽培において、赤色LEDを照射すると、光合成が活発化し、糖分が多くなる(筑波大学や農研機構の研究)
・遠赤色LEDを加えることで「果実の成熟促進・糖度増加」が確認されている
具体的な方法:
・日中は660nmの赤色LEDを強めに照射(光合成を促進)
・夜間または夕方に730nmの遠赤色を弱めに照射(熟成・糖分移行を促す)

C1-2.香り成分を引き出す:青色LED(450nm前後)
対象作物:バジル、ミント、いちご、メロンなど
研究例:
・青色LEDの照射によって、テルペンやフェニルプロパノイド系の香り物質の合成が活性化(千葉大学など)
・バジルでは、青色LEDで「リナロール」「ユージノール」などの香気成分が増加
具体的な方法:
・成長後期~収穫前の2~3日間、青色LED(450nm)を1日4~6時間照射
・「香り強化モード」として使用

C1-3.色の鮮やかさ(アントシアニン合成):紫~青色LED(400〜470nm)
対象作物:イチゴ、ぶどう、赤キャベツ、レタスなど
研究例:
・紫や青色LEDの照射で、アントシアニン(赤・紫の色素)の合成が促進(奈良女子大学、韓国農業科学院など)
・イチゴでは「果皮の色付きが良くなる」+「抗酸化成分が増える」報告あり
具体的な方法:
・収穫前1週間、紫(410〜420nm)または青(450nm)LEDを毎日4時間程度照射
・特に夜間に照射すると効果的

このあと、トマトを想定してChatGPTにいろいろ聞いてみたところ、光の色には、
・赤色(660nm):光合成促進→成長と糖度アップ
・青色(450nm):実の締まり&色素合成(アントシアニン系)
・遠赤(730nm):成熟を早め、糖分を果実に集中
・紫外(UV-A 380nm):リコピンや抗酸化成分を微増加(収穫直前に使用)
という特徴があるそうです。

その上で、ChatGPTからは、
・育苗期:赤6:青4 → 健全な茎と葉の成長
・開花期:赤7:青3 → 花芽形成促進
・果実肥大期:赤8:遠赤2 → 成長促進&糖分蓄積
・着色期:赤6:青3:UV1(夜間2時間)→ リコピン合成&色づき向上
という風に、成長に合わせてLEDの色配分を変えるといいのではないかという提案がされました。

更に、こういったデータがたまれば、「〇〇品種に最適な光プロファイル」を販売できるかもしれない、と「光のレシピ」という発明の可能性も提案されました。

ここまでくると、発明のイメージはかなり明確になってきます。

「対話型ブレスト」で創造性を引き出す


ChatGPTは、同じ質問に対しても、毎回まったく同じ答えを返すわけではありません。
プロンプト(質問)のわずかなニュアンスや文脈に応じて異なる回答を出してきます。
また、少々突拍子もないプロンプトを投げかけても、ChatGPTはなんとか答えをひねり出してきます。

たとえば「プリンタを使うときに楽しい気持ちになるような発明を考えてください」という無茶ぶりをしたところ、ChatGPTは「印刷時に応援メッセージが表示される」「アニメキャラがガイドするUI」「印刷音を楽器のように変える」といった、斜め上のアイディアを平然と返してきます。

苦笑するようなアイディアであっても、AIなら気兼ねなく提案してくれるため、AIの提案をヒントにして発想を広げやすくなります。

プロンプトを入力し、それに対する回答を読み取り、さらに深掘りする質問を返す。
この繰り返しによって、発想が自然と拡張されていきます。

いわばChatGPTとの「対話型ブレスト」です。

ChatGPTにはプライドも気分もありません。
気を遣わなくていいので、どんどん自由に試せます。
グループでのブレインストーミングに導入すれば、AIの突飛なアイディアをきっかけに、メンバー同士が気兼ねなく自由な意見を出しやすくなり、議論を活性化する効果も期待できます。

創造性を引き出すパートナー


ChatGPTは、発明の補助ツールとして使うものですが、アイディア出しに行き詰まったとき、視野を広げたいとき、他分野の知見を借りたいときなど、非常に頼りになる存在です。

AIとの共創は、今後の技術開発において不可避の流れです。
ChatGPTのような生成AIを「創造性を引き出すパートナー」として受け入れ、うまく共存していくことで、これまでにないスピードと広がりで新たな価値を生み出していけるはずです。

※このコラムの草稿は、ChatGPTに書いてもらっています。

参考:「ブレインストーミングの鉄則」「コロナから考える技術の未来