第1印象をつくるのは頭が楽をするためです。
第1印象は基準視点をつくる一方、想像力の働く余地を少なくします。また、第1印象は、ありきたりの視点になりがちです。
想像力を働かせるためには、別の視点から問題を眺めてみる姿勢が必要・・・とマハルコはいいます。
問題を言葉にする
まず、何が問題なのか、何を解決したいのかを言葉にします。
発明の場合、問題を定義することは発明の目的を明確化することでもあります。
発明によってどんな目的を達成したいのか、どんな問題を解決したいのか、を明確にします。
実現方法を考えるのはその次です。
誰をハッピーにしたいのか、どんなことがハッピーと感じられるのか、を考えてみるのも一つの有力なアプローチです。
次に、問題を別の言葉で言いかえてみます。
問題をいろいろな言葉で表現することにより想像力が刺激され、解決策を思いつきやすくなります。
マハルコによれば、アインシュタインも、レオナルド・ダ・ビンチも、ファインマンも、アリストテレスも、意識的に問題を別の言い方で表して新しい視点を見つけるように心がけていたといいます。
問題を言いかえる方法
問題の言いかえ方について、マハルコはいくつかの方法を紹介しています。
・部分を切り離す
問題の要因を洗い出します。要因の要因、要因の要因の要因・・・と分解していきます。
その上で、各要因について「なぜそうなったのか」を問います。
たとえば、「新製品の売り上げが低迷している」という問題があれば、低迷の要因を「人」「マーケティング」「手順」「製品」のように分けてみます。
「製品」について「デザインが悪い」「製品のリリースが遅れた」などの要因を抽出します。
そのうえで、「なぜデザインが悪いのか」という問いかけをしたとき、「消費者の意見をきちんと取り入れようとしなかったから」という考えに至ったとします。
新製品の売り上げが低迷しているという問題を、デザインが悪いという別の問題に言いかえることで、「消費者の意見をもっと取り入れてみよう」という解決策(アイディア)を出すことができます。
・言葉を変える
問題は「新製品の売り上げが低迷している」であるとします。
この問題に対する問いかけは「売上を増やすにはどうしたらいいか」です。この問いかけの言葉、特に、動詞を変えてみます。
・売上を惹きつけるにはどうしたらいいか
・売上を広げるにはどうしたらいいか
・売上を保つにはどうしたらいいか
・売上を循環させるにはどうしたらいいか
・売上を新しくするにはどうしたらいいか
・・・のように言葉をどんどん転回させます。
言葉を変えることで、視点が変わり、新しい考え方やアイディアに結びつく思考プロセスにスイッチが入ります。
言葉は想像力を刺激します。
田尻智は、インベーダーゲームには撃つ、パックマンなら食べるというように、画期的なゲームにはキーになる動詞があると分析しました。
そして、新しく発売されたゲームボーイ(昔の携帯型のゲーム機)の通信機能から交換するという動詞をひらめき、これが「ポケットモンスター(ポケモン)」の企画につながったといいます。
ポケモンは、昆虫採集のようにモンスターを集めて、友だち同士で交換できるというコンセプトが受けて大ヒットとなります。
・立場を変える
異性になったつもりで考えてみます。異性だったら、この状況をどう見るだろうかと考えることで問題に対する違う視座を得ることができます。異性になってみると、気づくことも考えることも変わるといいます。
発明をするときには、利用者の視点、投資家の視点、生産者の視点などさまざまな立場から発明を眺めてみます。
アインシュタインは、電子や光線になったつもりで問題を考えることで相対性理論を思いついたといいます。問題の中に入り込むことで、アイディアが発見されることもあります。
発明の表現
「問題の表現とその言いかえ」は発明のきっかけになります。
第三者(知財部や弁理士など)にとっても、問題(発明の目的)の表現とその言いかえは、発明の意義や価値に対する認識を深めます。
アイディアを出すための会議や、発明を深耕・展開するための会議のときにも、テーマ(問題)さえ明確であれば、問題を掘り下げたり転回させたりすることで、当初は思ってもいなかった地点まで到達できることもあります。
参考:「アイディアの出し方(1)」