特許に関する書類には、「特願2019-123456」「特開2020-234567」「特許第3456789号」など、よく似た番号が登場します。
これらは同じ発明に付けられることもありますが、それぞれ意味と付与される時期が異なります。
主な違いを簡単に整理すると、次のようになります。
出願番号(特願):特許庁に出願されたときの番号
公開番号(特開):出願内容が一般公開されたときの番号
登録番号(特許第○号):審査を経て特許権が成立したときの番号
したがって、「公開番号がある」というだけでは、特許権が成立しているとは限りません。
「特許第○号」という登録番号が付与されて、はじめて特許権が成立していることが分かります。
発明案件の番号は、非公式(私的)な番号と公式な番号の2種類に分けることができます。
非公式な番号
非公式な番号には、弁理士(特許事務所)が付与する番号(以下、便宜上「事務所番号」とよぶ)と、出願人(企業)が付与する番号(以下、便宜上「企業番号」とよぶ)の2種類があります。
非公式なので番号の決め方はまったく自由です。

(1)事務所番号
クライアント(企業)から特許出願を依頼されたとき、特許事務所は発明案件に事務所番号を付与します。事務所番号は、特許事務所の内部ルールによって決まります。クライアントの略号、年度、通し番号などの組み合わせで決まることが多いです。
外国出願をする場合には「US」などの国名を追加することもありますが、以下、日本国内に絞った話にします。
(2)企業番号
企業(クライアント)も、発明案件に企業番号を付与します。一般的には、年度や通し番号などを組み合わせることが多いです。未出願段階の発明案件には、通常、事務所番号と企業番号が付与されます。企業番号は付与されないこともあります。
特許出願の願書に「整理番号」を記載する欄があります。整理番号として、通常、企業番号を記載しますが、企業番号がないときには事務所番号を記載します。
事務所番号や企業番号は、特許庁が付与する番号ではなく、特許事務所と企業が案件を管理し、互いに照合するための番号です。
公式な番号
公式な番号はいろいろありますが、主なものは、出願番号、公開番号、登録番号です。
これらの番号は、特許出願の手続きが進むにつれて、順番に付与されます。
※特許出願から特許取得までの手続き全体についてはこちらの記事で説明しています。
(1)出願番号
特許事務所は、特許出願書類を作成し、出願端末(パソコン)から特許出願します。このとき、特許庁から「出願番号」を含む受領書がオンラインで通知されます。出願番号は「特願(西暦)-(通し番号)」という形式で付与されます。「特願2019-123456」であれば、2019年に受け付けられた123456番目の特許出願という意味です。
出願番号の「通し番号」を見れば、今年はどのくらいの特許出願がされているのか、例年に比べてどのくらい増減しているのかを推測できます。
出願番号は、まだ公開されていない特許出願にも付与されます。そのため、出願番号を知っていても、出願から1年半が経過していないなどの理由により、特許情報プラットフォームで出願内容を確認できないことがあります。
(2)公開番号
特許出願から1年半が経過すると、特許庁は特許出願書類をインターネットで公開します(出願公開)。いいかえれば、特許出願をしても1年半が経過するまでは技術は秘密として扱われます。出願公開に際し、特許庁は「公開番号」を付与します。公開番号は「特開(西暦)-(通し番号)」という形式で付与されます。「特開2020-234567」であれば、2020年において234567番目に公開された特許出願という意味です。
公開番号は「公開された特許出願」の番号であって、成立した特許権の番号ではありません。
公開公報を見つけたときには、その出願が審査中なのか、拒絶されたのか、すでに特許になっているのかを別途確認する必要があります。
公開公報には、請求項、明細書、図面などが掲載されています(特許文書の構成や読み方についてはこちら)。
特許出願書類が公開されると、そこに記載された発明は「公知技術(みんなが知っている技術)」として扱われます。その公開内容と同一である、または容易に思いつくと判断される発明については、原則として特許を取得できなくなります。出願公開には、「技術水準(特許を取るために必要なレベル)」を上昇させるという法的効果があります。
発明→出願→公開(技術水準の上昇)→発明→・・・というプロセスにより、特許権を取得するために必要なレベルが徐々にアップしていきます。いろいろな発明が次々に出願公開されて技術水準がどんどん高くなるので、それに負けないように技術開発をしなければならなくなります。
特許制度は、発明者に一定期間の独占権を与える代わりに、発明の内容を社会に公開させる仕組みです。特許法は、発明を出願公開させることで技術進歩にドライブをかけることを狙っています。発明を表彰する制度ではなく、発明の保護と公開の両方を通じて技術の進歩を促すことを目的としています。逆にいえば、特許権を諦める代わりに技術を秘匿するという選択肢もあります。
(3)登録番号(特許番号)
審査の結果、特許権に値する発明であると認められると、特許庁は「登録番号」を付与します。登録番号は「特許第(通し番号)」という形式で付与されます。たとえば、「特許第3456789号」であれば、日本国で成立した3456789番目の特許権という意味です。
登録番号は一般に「特許番号」ともよばれます。「特許第○号」と記載されていれば、少なくともその番号の特許権が成立したことが分かります。ただし、その後、存続期間の満了や特許料の不納などによって、すでに権利が消滅している可能性はあります。
ちなみに、特許第1号(1885年出願、1885年成立)は、船舶用の防錆塗料に関します。当時の特許庁(専売特許所)の長官は高橋是清でした。発明者の堀田瑞松(ほった・ずいしょう)は工芸家です。
※日本に特許制度が導入された経緯や、特許第1号が生まれた時代についてはこちら記事で紹介しています。
ほとんど毎日のように新しい特許出願がなされ、そのうちの一部は特許権となり、しばらく存続したあと、順次消滅していきます。特許権が消滅しても、「出願公開」により発明が公開されたという事実は残るので技術水準は不可逆的に上昇を続けます。
番号から手続きの段階が分かる
同じ発明に対して複数の番号が付いているのは、案件管理の主体や、特許手続きの段階が異なるためです。
・事務所番号・企業番号:企業や特許事務所による案件管理
・出願番号:特許庁への出願完了
・公開番号:出願内容の一般公開
・登録番号(特許番号):特許権の成立
番号の種類を見分けられるようになると、その書類が何を示しているのか、その発明が手続き上どの段階にあるのかを理解しやすくなります。
制約と自由
下の図は、時点T1を現在時点としたときの複数の特許権の存続状態を年表風に示しています。
特許権P1~P6のうち、時点T1では特許権P1~P4は消滅し、P5,P6は存続しています。
特許権P1~P4に関わる技術はかつて独占されていましたが、時点T1の前に消滅(失効)し、時点T1では自由に使うことのできる技術(自由技術)になっています。ただし、同じ製品や技術について別の特許権が存続している場合には、すべてを自由に実施できるとは限りません。一方、特許権P5、P6に関わる技術は、独占状態にあります。
下の図は、時点T1よりも少し未来の時点T2における複数の特許権の存続状態を示しています。特許権P5は消滅し(自由技術化)、特許権P6はまだ存続しています。また、特許権P7,P8が新たに成立しています。
特許権P1~P4に加えて特許権P5に関わる技術も自由技術になったので、技術開発の自由度は広がったといえます。一方、特許権P7,P8に関わる技術(より高度な新技術)は、独占状態にあります。

このようにして、特許権消滅による自由度の拡大と、特許権の成立による新しい制約が繰り返し発生します。
特許番号が付いていることと、現在も特許権が存続していることは同じではありません。
実際に技術を利用するときには、番号だけで判断せず、特許原簿などで現在の権利状態を確認する必要があります。